CEDEC2016に行ってきたよ(初日)
今年も無事CEDECに参加することができました。
去年から色々と環境の変化があったので、参加できるというだけでありがたい話だなと感じております。
それでは、ざっと初日の振り返りを行っておこうと思います。
画像を調理する: 面白く、役に立ち、ストーリーのある研究開発のすすめ(金出 武雄/カーネギーメロン大学)
コンピュータービジョン、ロボット工学を専門とされている金出先生の取り組みや研究開発の進め方についての基調講演でした。
講演中の金出先生の言葉で
成功するアイディアも元々は単純で素直であるもの
率直な発想をじゃまるすもの、それはなまじっか「知っている」と思う心、"専門的"「知識」である。
というのは、含蓄深い言葉だなぁと思いました。
素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術 (PHP文庫)
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『目指せトップアイドル!』 PS4アイドルマスタープラチナスターズで目指したこと(阿部 貴之・富田 智子・前澤 圭一/株式会社バンダイナムコスタジオ)
アイマスも業務用から数えると11周年なんですね。
長寿タイトルになっていて素直にすごいと思います。
講演の内容は、GAME Watch でもすでに取り上げられているようです。
(参照 : 「アイマス プラチナスターズ」表現のキモ「ヴァリアブルトゥーン」大公開!)
キャラクターの表現としては、2008年から足掛け7年使い続けていたという"センシティブトゥーン"が"ブァリアブルトゥーン"になってどのように変化したのかという紹介があったのですが、もっとエンジニアリング寄りの話を期待していただけに、画像比較だけの紹介は残念でした。
講演を聞いていて驚いた点としては、背景デザイナーの仕事が
- キャラクターの魅力をより引き出すライティング
- 空気感を含むステージシーンを盛り上げる
にあるとして、単にモデリングの範囲を越えて演出も担当しているのはすごいと思いました。
アナログゲームが熱いって本当?〜メカニクスデザインの最前線〜(遠藤 雅伸/東京工芸大学・渡辺 範明/株式会社ドロッセルマイヤー商會・丸田 康司/株式会社 すごろくや)
日本のアナログゲームの概況として
- 現在、国内で流通しているタイトルは1,000種
- 年間で新たに発行される商用ゲームは、300種類以上(インディーズ含まず)
という話や、ドミニオンを皮切りに2009年以降「日本語版」呼ばれるローカライズ輸入盤が増えている件や、2015年のアナログゲーム市場としては 30 〜 40億円として2009年から4〜5倍程度の成長をみせているといった話をきかせていただきました。
2015年の国内デジタルゲームの市場規模が1兆3591億円とのことなので、この値と比較すると0.3%程度なので非常に小さい規模ですが、成長は著しいと思います。
アナログゲーム市場の成長の背景には、「ゲームとしての目新しさが広がりを見せている」とのことでした。
個人的には、(スマホ含む)デジタルゲームのメカニクスに余り変化が感じられなくなってきて、アナログゲームに人が流れ始めているのではないかと考えました。
また、日本アナログゲーム市場の特徴として
- 黎明期は愛好家が牽引(専門店とゲームサークル)
- 輸入からスタートし徐々に国産化
- インディーズ(同人)作家が(市場規模に対して)多い
という点が上がるそうです。
インディーズアナログゲームの背景としては、
- ゲームマーケットというイベントの存在が大きい
- 少人数で作れる
- 低予算で作れる
といった事が大きいようです。
ゲームマーケットは、2000年に数百人の規模で始まって、2016年には数万の動員、450サークルが参加といった規模になっているようです。
これは、単純に考えても450人以上のインディペンデントなゲームメカニクスデザイナーが居るということで、日本のゲーム市場で類を見ない状況になっているとの話でした。
インディーズマーケットが大きく、かつ日本独自ゲームメカニクスを伴って成長している背景としては、
といった事があるとのことです。
Unity や Unreal といった安価で高機能なゲームエンジンが一般的になったとはいえ、デジタルゲームは高度化しすぎてしまって、メカニクスを作りたい人たちが疲弊してきてしまった結果、インディーズマーケットに流れていっているのかなぁ...などと考えました。
アナログゲーム市場はこれからも注目していきたいです。
利益を守れ!クラッキングの手口と対策・被害額試算 〜Unity 等でモバイルアプリを開発・運営されている方へ〜(坂井 茂 /バーチャルコミュニケーションズ株式会社 )
モバイルアプリのクラッキングの手口を具体的に紹介していただきました。
タイトルに「Unity 等でモバイルアプリを開発・運営されている方へ」とあるので、具体的な対応方法や事例の紹介があるのかと期待していましたが、クラッキングの手口紹介の方がメインでした。
クラッキングの手口紹介を聞いて、「こうも簡単にクラッキングできるものなのか...」と衝撃を受けました。
一部の悪意あるユーザー(しかも、組織的な犯行らしい)のために、多大な労力をかけて対応を行わなければいけないと思うと気が滅入りますよね...
Unity などのゲームエンジンがある程度クラッキング対策なんかを考えてくれればいいのに...なんてことも思いますが、イタチごっこになってしまうだけなんでしょうね...
クラッキングへの対応方法としては、
- セーブデータとメモリデータの暗号化
- ゲーム進行データの暗号化
- プレイヤーデータ暗号化
- イベントデータ暗号化
- パケットの暗号化
- 自動化ツール検知
- VM検知
- Jailbreak検知、root化検知
- リソースデータ暗号化
- ロジック解析・改ざん対策
- 秘密鍵の秘匿化
- 難読化
といったことを行うということですが、もう少し具体的な話を聞きたかったです。
ゲームのための色彩工学(内村 創/Polyphony Digital Inc.)
眼と脳の色の仕組みから始まり、色空間と相互変換、色の測定方法といった感じで、光や色の客観表現をどのように用いるか?といった話でした。
...正直、私にはついていけない部分が多かったのです。
話の大きな流れとしては、光や色がどのように表現されていてどのように物が見えるのかを知っていないと、誤った色情報を持つテクスチャを作ってしまったり、レンダリング時にライトと合わせた時に意図しないライティング結果になってしまったりするので、"適正な色"に対する知識をつけましょうと言う話でした。
撮影時のライトの計測が正しくできるようになっていれば、写真などからテクスチャを作るときに物体に対するライトの影響を取り除くことができ、ライトの影響を取り除いたテクスチャをレンダリングに利用できれば、ライティングの結果を意図したとおりに得ることができます。
分光放射照度計などで、一般的な蛍光灯などを測定してみると、光の波長に偏りがあることがわかります。
物体色は、
物体色 = 光源スペクトル * 分光反射率
なので、光の波長に偏りがある場合、その光で照らされた物体の色は正しく物体色を表していないことになります。
極端な例をあげれば、赤いライトで物体を照らした時、青・緑の分光反射率がわからないということです。
こういった正しくないライトの状況で撮影された写真からテクスチャを作った場合、レンダリング時に白いライトでライティングしても正しい結果が得られないということになります。
なので、正しい光や色の知識が必要となる...といった話だったと理解したのですが、具体的なワークフローがどのようになっているのかが想像できずに消化不良な感じがしてしまいました。
...う〜む、理解が追いついてないな...
http://d65.xyz/cedec2016 に資料の事前公開ページが有ります。
ここに書かれている資料にそって講演が行われました(というか、ほぼ資料そのまま)ので、見逃した方はこちらを参照されると良いと思います。
Fate/Grand Orderにおける、ディライトワークス流AWS導入&活用術(田村 祐樹/ピアレス株式会社・今井 守生/ディライトワークス株式会社)
AppStore や Google Play で、売上げランキングのトップに何度もなっている Fate/Grand Order ではどのようにAWSを活用してるのかといった話でした。
元々は Microsoft Azure 上にインフラを整備していたようですが、諸々問題があって AWS に乗り換えたそうです。
今年の6月に開催された「AWS Summit Tokyo 2016」でも同タイトルで講演を行っているようですが、内容は少しアップデートされているようです。
(参考 : Fate/Grand Orderにおける、ディライトワークス流AWS導入&活用術)
講演の後半は、AWS の活用術というよりも、大規模アクセスで障害が起きた時の心構えといった感じでした。
インフラエンジニアが不在の状況で取れる選択肢としては、
1. 採用する
2. 外部にお願いする
3. 自分たちでやる
とある中、現実的な選択肢としては「自分たちでやるしかない」というのは相当な苦労があっただろうなぁと感じました。
本を読もうが、人に聞こうが、最終的には自分(たち)で判断して進めて知見を蓄えるしか道は開けない、そんなことを感じました。