CEDEC2016に行ってきたよ(3日目)

少し日が経ってしまいましたが、CEDEC2016最終日の雑感をまとめておこうと思います。

...毎年、CEDECが終わると年末に向けて時が加速するような気がするので、気を引き締めていかないといけませんね。

まだまだ今年中にやっておきたいことは山積みの状態なので、一日一日を大切に過ごしていきたいと思います。

そんなわけで、雑感です。

「ゲームの未来」(襟川 陽一/株式会社コーエーテクモホールディングス)

色々なところで語られていたりもしますが、襟川さんの生い立ちやコーエーテクモの成り立ち、基本理念などを聞かせていただきました。

元々は染料工業薬品の卸問屋だったのに、本屋でマイコンの雑誌に興味を惹かれてからプログラミングにハマり、ゲーム開発業にシフトしていくという話は胸熱です。

講演の後半では、タイトルの通り「ゲームの未来」について襟川さんの思い描く未来を語っていただきました。
印象に残っている点としては、

  • ゲームソフト開発専業のモデルだったものが、「IPの想像と展開」に変化していった
  • 2010年を堺に課金の仕組みが大きく変わってきた(課金形態が複数になってきた)
  • 開発予算は高騰化を続けている
    • パッケージビジネス
      • パソコン用ゲーム : 10億円未満
      • 家庭用ゲーム機用ゲーム : 1億から50億円(欧米は1億から数100億円)
    • デジタルビジネス
      • 携帯電話用ゲーム : 5千万から2億円 + 運営費
      • スマホ : 2億から10億 + 運営費
  • 高騰化する開発予算を抑えるためにも基礎技術開発が必要
  • 2000年代経営統合が進み、2010年頃M&Aが進んだ。今後もプラットフォーム展開を見据えた統合化が進んでいく
  • 新しいトレンド

といったあたりが印象に残りました。
特に開発予算の高騰化については、前半の光栄のなりたちの話を聞いた後だけに、時代の流れを強く感じました。
先人たちが道を切り開いてきてくれたからこそ今があるとはいえ、中小企業や個人開発者などには厳しい情勢になっているということも感じました。

大規模学習を用いたCGの最先端研究の紹介(小山 裕己/東京大学大学院・飯塚 里志/早稲田大学)

アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ 制作事例・テクニカル編 − 多種多様なスマホで5人のアイドルが躍動するライブの舞台裏 (60fpsリズムゲームの開発手法)』を聴きたかったのですが、定員オーバーのため会場に入れませんでした。

こちらの講演は Game Watch で紹介されているようですね。
(参考 : 2Dアイドルのかわいさを3Dで再現する! 「デレステ」開発事例公開 )

さて、『大規模学習を用いたCGの最先端研究の紹介』ですが、いわゆるディープラーニングと呼ばれるような機械学習クラウドソーシングを利用したCG研究の論文紹介をしていただきました。

クラウドソーシングとは、ランサーズやクラウドワークスで有名ですが、その形態として以下の様なものがあります。

  • コンペティション
    • デザイン作品(e.g ロゴ)を公募
    • 優れた作品にだけ報酬
  • プロジェクト型
    • 短期(e.g 1ヶ月)のプロジェクトに関わる労働力を酵母
  • マイクロタスク型
    • 誰でもできる簡単なタスク
    • 数行で終わる内容を数円で発注
    • いつでも安価に大量に発注可能

CG研究者は、マイクロタスク型に注目しており、機械学習に必要となる教師データをアンケートのような形でクラウドソーシングにマイクロタスク型で発注を行い、安価に大量のデータを集めるということを行っているそうです。

以下の論文が紹介されました。

Body Talk: Crowdshaping Realistic 3D Avatars with Words

  • 言葉から形状を推定する
  • 形状から言葉を推定する
  • 写真1枚から3Dスキャニング

Attriblt: Content Creation with Semantic Attributes

Semantic Shape Editing Using Deformation Handles

  • 言葉に基づく形状変化
  • 「履き心地がよい」などのパラメーターで形状を変化させる

A Similarity Measure for Illustration Style

  • イラストの近さ

Style Compatibility for 3D Furniture Models

  • 三次元モデル間のスタイルの親和性を学習
  • アセットストアなどで親和性の高いモデルの検索などにつかえるかも

Crowd-Powerd Parameter Analysis for Visual Design Exploration

  • 美的感覚に基づくパラメータ調整

Mirror Mirror:Crowdsourcing Better Portraits

  • ポートレード写真の良し悪しを学習
  • 写真撮影でシャッターを切らなくなる?

まとめとして、

  • マイクロタスク型クラウドソーシング
    • かんたんなものならいつでも安価に大量の
  • クラウドソーシングと機械学習の組み合わせ
    • 認知好みに関する教師データ
  • デザイン支援技術としての将来性

といった事が挙げられていました。

後半は、『大規模学習を用いたCG』として、白黒写真の自動色付けやラフスケッチの自動線画化が紹介されました。

人の手で(アルゴリズムとしては)実装しづらい"感覚"のようなものが、機械学習クラウドソーシングによって実現されていく可能性があるというのは非常に興味深いと感じました。

ドラゴンクエストへの道 〜ドラゴンクエスト30周年を迎えて〜(堀井雄二/ゲームデザイナー・齊藤陽介/株式会社スクウェア・エニックス)

ドラクエ30周年ってすごいですね。
数多くのタイトルがナンバリングタイトルとして発売されていますが、一人のゲームデザイナーが同じタイトルに関わり続けているという事例はドラクエぐらいしか見当たらないと思います。
改めて堀井雄二さんの凄さを感じました。

講演の内容は、色々なところでも紹介されているみたいですね。

堀井雄二氏がドラクエの30年間を振り返る ゲームデザイナーとして大事なことは…

堀井雄二氏が「ドラゴンクエスト」の30年を一挙に振り返る!

ドラクエ堀井氏、プログラミングの思い出をCEDEC 2016で語る

ドラクエファン、堀井雄二ファンが喜びそうな講演内容だったと思うのですが、もう少し CEDEC っぽい内容を話して頂きたかったなぁ...なんてことも感じてしまいました。

手描き感を再現するペイントシミュレータの最新研究紹介(大河原 昭/シリコンスタジオ株式会社)

『AIによるゲームアプリ運用の課題解決へのアプローチ』を聴きたかったのですが、定員オーバーのため入れず...

『手描き感を再現するペイントシミュレータの最新研究紹介』として、油絵のペイントシミュレータの研究紹介をしていただきました。
最新研究のアプローチとしては、

  • (ブラシの)毛先を1本ずつシミュレーション
  • (グリッドとパーティクルの)ハイブリッド流体モデル

といったアプローチをとっているようです。

なぜグリッドとパーティクルを組み合わせるのか?と言うと、

  • グリッドのみ
    • ぼやけた見た目になってしまう
  • パーティクルのみ
    • 大量のパーティクルが必要(計算負荷的に辛い)

とのことでした。

FINAL FANTASY XVの開発を支えるバックエンド ~ アセットビルドシステムの仕組みと、ゲームプレイログの収集・可視化の取り組み ~(南野 真太郎/株式会社スクウェア・エニックス)

コンテンツが複雑化してきているので、アセットビルドシステムに対する要求ってのは重要になっていると思う。
FF XV というビッグタイトルだとかなりの複雑さになるんだろうな...

前半はアセットビルドシステムの仕組み、後半はゲームプレイログの収集と可視化をどのように進めたかという話でした。

全体的にあまり目新し話はなかったと思うのですが、ゲームプレイログを統一的に収集できるように専用のAPIを介してログを収集しているという点は興味深かったです。

オンラインゲームでの導入事例なんかがでてくると面白いんじゃないかなぁなどと感じました。

モバイル最適化!〜モンスターハンター エクスプロアの場合〜(井上 真一/株式会社カプコン)

講演の前半は、(PSP3DSのように)携帯ゲーム機用に開発されたモンハンをただ単純にスマホに持っていくだけでは遊びづらくなってしまうので、どのような点に注意をしながらスマホ向けの仕様として落とし込んでいったか、といった話しでした。

後半は、急遽マルチプレイ対応を行うことになってしまい、どのような対応を行ったのか、リリース後にどのような問題点が発生したのか、といったポストモーテムでした。

急遽マルチプレイ対応が決まりチーム内にサーバエンジニアがいない状況で、どのようなことを考えどのような選択を採り、どのような問題が発生して、どのように対応していったのかという話はとても貴重な話だと感じました。

後日、CEDiL で資料が公開されるようなので、改めてじっくり資料を読みたいと思います。

ざっと印象に残った点だけ挙げてみると、

  • エクスプロアのサーバはすべてnode.js
  • 負荷対策はミドルウェアに任せたい(mongoDB)
  • 負荷試験
    • Rest サーバ : おとなしく Jmeter を使用した
    • Socket サーバ : 負荷かけ用クライアントを自作
  • 耐久試験(連続稼働)限界試験(性能限界)を行った
  • 可能な限り実際のユーザプレイに近いシナリオ作成にこだわった
  • 目標は同時接続10万
  • 同時接続5万までの道
    • 最小構成だと同時接続3万人まで。
    • フロントサーバを増やして同時接続5万人まで達成
  • 目標の10万を突破し15万を達成
    • 垂直分割をやってみる
  • 緊急メンテ
    • 同時接続20万突破(想定通り15万で落ちた)

といったあたりが印象に残りました。
同時アクセス10万と想定していたところ、20万まで伸びたって話はさすがモンハンだなと思いました。

まとめ

今年も三日間参加してきたのですが、なんとなく開発の大規模化が進み、中小デベロッパーのふるい落としが更に進んでいるといった印象を受けました。
一部大型タイトルを除いて、自社でエンジンまで開発する時代というのはもはや過去のモノになりつつあるんですかね...

グラフィックスに関してはかなり顕著に現れていると思うのですが、高度化・専門化が進み、一部のエキスパートがつくったものを現場のスタッフが使うという構図がより鮮明になっているような印象を受けました。

そんな中で、大半を占める普通のエンジニア(開発スタッフといっても良い)の生存戦略とは、中小デベロッパーの生存戦略とは...そんなことを考えさせられる三日間でした。