IGDA ゲームAI連続セミナー「ゲームAIを読み解く」第三回

IGDA主催の、ゲームAI連続セミナー「ゲームAIを読み解く」第三回 「Chrome HoundsにおけるチームAI」に参加してきました。

場所は、前回と同じ東京大学で開催されました。

構成としては、前回と同様二部構成で、第一部は、フロムソフトウェアの三宅 陽一郎さんによる、ゲームAIの技術解説が120分程度行われ、休憩を挟んで第二部が、第一部の内容を踏まえた、グループワークという形で進められました。

第一部は、「集団における知性」の概論から始まり、郡知能、マルチエージェントの技術解説が行われました。

郡知能の手法とは、反射的だったり単一機能だったりする小さなプログラムを連携させて全体として新しい知能(機能)を実現するものだそうです。

例えば、「ブロック製造」「ブロック運搬」「ブロック積載」といった三種類の機能を持ったロボット(プログラム)を用いて、それを連携させることで、「高い場所から人を助ける」といった全体としての機能を実現することを言います。

対する(?)、マルチエージェントの手法とは、個々のAIを自立した知性として作成し、相互作用させることで、全体としての機能を実現します。

単純な反射型とは異なり、個のAIは自立した知性として存在し、それぞれの振る舞いをそれぞれが考えるため、AI間の協調関係を定義することにより全体の振る舞いが決定されます。

クロムハウンズでは、個体としてのCOMが現在の戦局を判断し、自分が行うべき行動を点数をつけて、判断を行っているそうです。

そして、COM間の協調関係として、チームAIというキャラクタとしてのCOMとは別のAIが存在し、ゲーム全体の状況判断を行い、各COMに対してチームとしての指令を伝達するような構造になっているようです。

各COMは、チームAIの意思決定と、自身の判断を比較して、より評価点数の高い振る舞いを行うようです。

ゲーム前半はCOMの意思決定が大きく、終盤に入るとチームAIの意思決定が大きく働くように、それぞれの点数は、時間軸において係数が掛けられ、評価点数の重みとしているとのことです。

第二部のグループワークでは、スーパーマリオの敵キャラクターに「集団としての知能」を取り入れるとどうなるか?といったことを、7名程度のグループに分かれて話し合いました。

私のグループでは、スーパーマリオのイメージが強すぎたのか、敵キャラクタの配置論的な話に時間が割かれてしまい、「集団としての知能」がどのように機能するか、しないのかといった話は、あまり出来なかったと思います。

...というか、長久さんが作成した「グループワーク補助シート」がまとまりすぎていて、これのイメージが強すぎたんじゃないかと...

話は発散気味だったのですが、他の人の話を聞いたり、思いつきのことをしゃべってみたりしながら、自分の理解の弱い部分とか、他の人が(自分とは)別の視点で技術解説を捕らえていたりしたのがわかったりして、それはそれで、有意義な時間をすごせたんじゃないかと思います。


三回目となった、ゲームAI連続セミナーですが、運営方法もこなれてきたせいか、前回よりもセミナーに集中することが出来てよかったと思います。
(開始時から、後半のグループワークごとにテーブルが割り当てられているのは良かった)

個人的なイメージとしては、日本の開発会社はこういった情報を積極的に出したがらないというイメージが強いので、クロムハウンズのような優良なゲームの名前を挙げて、その実例を交えながら技術解説をしていただけるというのは、とても貴重で有意義な時間だと思いました。

実例を交えずに、技術解説だけ行われたとしても、AIのような見た目だけではわからない技術においては、イメージがつかみづらいですし、自分の会社でやってみたくても、アンテナの低いディレクター相手に話を進めるのも苦労しそうな気がします。

セミナーの内容とは直接関係ありませんが、懇親会では色々な方とお話させていただくことができて、色々と勉強になりました。

席では途中、ディレクター論とか新人育成論といったような話題が登りましたが、非常に興味深くお話を伺わせていただきました。
(同じ席になった方々、大変楽しかったです、ありがとうございました)

第四回は、六月下旬に開催されるとのことです。
当然次回も参加させていただく予定ですが、この連続セミナーにかかわらず、会社を超えた技術交流の場が増えていくと良いと感じました。