デジタルコンテンツの次世代基盤技術に関する調査研究報告

今月の12日に行われた。IGDA主催の、ゲームAI連続セミナー「ゲームAIを読み解く」第三回に出席したときに、財団法人デジタルコンテンツ協会発行の「デジタルコンテンツの次世代基盤技術に関する調査研究報告」という、250ページ程度の冊子がセミナー参加者全員に配られました。

ゲームAI連続セミナーのコーディネーターを勤められていた、長久さんいわく「ページ数分ぐらいの価値はあるので、興味のある方は読んでみてください」との事だったんですが、実際に読んでみると、かなり面白くてためになることが書かれているなぁと思いました。

全体像としては、2006年のCEDEC/GDC/SIGGRAPHの全体像の紹介や、その中での重要そうなトピックが大まかに紹介されていて、近年の技術動向をぼんやりと俯瞰するのには、最適なドキュメントだと思いました。


また、ゲーム関連の研究者動向や、産学の連携のあり方などが書かれていて、とても興味深かったです。

中でも、新 清士さんの書かれた、「3.3.7 GDCイノベーション効果とCEDECの課題」は、ゲーム産業の情報交流のあり方を論じていて、とても面白いと思いました。

要約すると、今までの日本のゲーム業界は、情報に対して閉鎖的な側面を持っていて、横の(企業を超えた)緩やかな情報交流が上手く働かず、日本のゲーム産業の国際力の低下につながっていったとしている。
対して、北米では、オープンソース文化の浸透や、Modカルチャーの台頭から、情報共有が上手く行われ、競争力を向上させていったとしている。
そのなかで、CEDECが担ってきた役割と、変わりつつある日本のゲーム業界がどのようになっていくのかということが書かれており、最後に、CEDECの課題として、「国際色が弱い点」と「学との連携が弱い」点が上げられていました。

本報告書、全体を通して一番強く感じた点としては、ゲーム開発に必要な知識は多岐に渡り、それぞれの要素技術の研究は、日本各地で断片的に行われているという点と、それをつなぎ合わせる為には色々な課題があるということでした。

(よくしらんけど)ちょっと前までの、これまでのゲーム開発者は、なにか面白そうな企画があってそれを実現するために、プログラマやプランナが現場でがんばって、技術を開拓して行ったんだと思います。
けれども、マシンスペックがあがって、出来る範囲がひろがったり、表現が豊かになるにしたがって、やりたいことを思いついてから製品に向けて実現方法を模索し始めるんでは足が遅すぎ(やることが多すぎ)てしまうと思います。

ゲーム業界で働く人たちの労働時間が長いというのは、本来はこういった部分の技術開発のために労働時間が長くなるべきであって、開発期間の圧縮であるとか、わかりきっている作業の時間のために充てられるべきでは無いと思いました。

企業の研究開発部隊としては、先回りして色々な技術吸収をしていく必要があると思いますが、応用範囲が広すぎて限界がありますし、これからは個人間のアンテナの張り方や、個々人をつなげるネットワークが重要になってくるんだと思います。


...ところで、この報告書ってどういった経路で、どうやって手に入れればよいんですかね?
デジタルコンテンツ協会のHPをみてみたんですけど、よくわかりませんでした。

せっかくこれだけ面白い報告書を作られているんですから、もう少し入手経路に関する情報も出せば良いのになぁ...