CEDEC2014に行ってきたよ(三日目)

CEDEC最終日となる三日目に参加してきましたので、軽く雑感などをまとめておこうと思います.

写真は、帰りに友人とご飯を食べたときの写真です.
彼はCEDEC参加2回目だったのですが色々と思うところがあったようで、こういったカンファレンスに参加するのは、すぐに効果が出るものではないけれども、糧になっていくんだろうなぁ...なんて事を感じました.

そして、お肉おいしゅうございました.

さて、そんなわけで雑感を...

(基調講演)『これからのゲームとゲームクリエイター』(名越 稔洋/株式会社セガ)

確か、2006年にも基調講演(だったかな?)をされていると思いました.
その時も聴講させていただいて、スライドを使わずに(おそらくテーマだけを決めて)その場の勢いで講演を進めるスタイル(?)に驚きました.
...そして話の焦点が合わなくなって若干ぐだるというという印象が...

今回も同じように、机にどかっと座って、その場の勢いで講演を進めておられました.

「F2Pが大きな牽引力となってピーキーな(商売をする)世界にシフトしているが、そんな中で高級レストランは生きていけるのか?」(個人的要約)、という話題が印象的でした.

スマホゲームの話とかF2Pの話とか言葉を選んで話をされているようでしたが、なかなか「ビデオゲーム」という枠組みでモノを作って売るというのは難しくなっていて、各社さん色々と苦労されていることを感じました.

『カメラ的に正しいフォトリアルグラフィック制作ワークフロー』(橋口 智仁・村岡 伸一/株式会社カプコン)

ビジュアルアーチスト関連のセッションだったのですが、かなりテクニカルな内容でした.

フォトリアリスティックを「カメラ」「物体(マテリアル)」「ライト」と因数分解して、写真からマテリアルとライトを復元していくという流れでした.

技術的な話題は少し前から上がっていて、「適切なマテリアルの設定」だとか「アルベドテクスチャを作るために、スペキュラ成分を写真から抜いたデータが欲しいので...」といったことが議論されておりましたが、ある程度の規模のあるワークフローの事例紹介としてとても良かったです.

紹介されてたワークフローは、当然物理ベースレンダリングなどへの組み込みを行えるものですが、カメラ画像から正しくパラメータ抽出を行えるのであれば、レンダリングパイプラインが簡単なものでもフォトリアル表現の精度が上がっていくのだと感じました.

この講演の内容は、一度自分たちの手で試してみたいです.

『KNACK Engine Postmortem』(村上 剛・山口 太/Sony Computer Entertainment)

PS4のローンチタイトルとして発売された『KNACK』の開発ポストモーテム.

実際のゲームタイトルとして採用したレンダリングテクニックの良かった点悪かった点の紹介といった内容でした.

環境マップを利用した際のリフレクションの求め方は、実用性が高そうだと感じたので実装してみたい.
...類似話題が、『GPU Gems』の"Chapter 19 イメージベースドライティング"とかにあった気がする...

SHの研究をやってみたときに、GPU Gems を参考にしながら環境マップからのサンプリングを試したりしてみたんですけど、いまいち Gems に書かれている説明がしっくりこなかった覚えがあるんですよね(当時は知識が足りなかっただけで、今読むと普通に読めちゃうかもなんだけど...)

まぁ、資料が公開されたタイミングで、こちらも読み返してみることにします.

あと、SSAO の計算方法は面白かった.

SSAOは、『GPU Pro2』とかを参考にしてiPad2 上で実装した覚えがあるんだけれども、レイのサンプリング方法とかがコスト高に感じていたのと想像よりもノイズが多かったので、実験までで終了していたんですよね.

今回紹介された手法は、法線ベースでAOを求める手法みたいなので、実験実装してみるのは面白そうかなと思いました.

実用ネタ満載の講演だったので、資料をじっくり読み返したい.

『30~40人規模の開発チームでマルチプラットフォームタイトルをゲームエンジンから作った理由とその効果』(石井 泰寛・吉田 秀治/株式会社ガンバリオン)

私も、中規模(?)開発のゲームエンジン開発エンジニアみたいなことをやらせていただいているので、とても興味深い講演でした.

Unity とか Unreal Engineとか安価で超高機能なゲームエンジンが市民権を得ている現在は、自社でゲームエンジンを開発&メンテナンスする利点ってなかなか理解されないと思うのです.

ぶっちゃけ、自社エンジンとそういったゲームエンジンの機能比較表をつくってしまうと、ほぼ全敗って結果になるんだと思うんですが...

じゃ、どこが利点になるのかっていうと、自分たちの開発パイプライン含めて新しい環境へのポータビリティが高いってところしか無いと思うんですよね.

そのポータビリティって中には、社員教育という項目も含まれているわけで、新しい他社のエンジンを買ってきたときには、学習コストだとかある程度のところまで使いこなせるようになるまでのワークフロー開発なんかを含んで考えるべき何だと思うんです.

逆に、自社エンジンの採用を決めてしまうと、社内のワークフロー開発ってのは気分良く構築できるんですけど、モデルデータなんかを他社さんに依頼しようとするとその枠組み含めて、他社への情報展開が必要になってコスト高に感じたり...とか、どの開発手法を採用するかって難しい話題なのだと改めて考えさせられました.

西川善司のゲーム開発マニアックス「グラフィックス編」2014』(西川 善司/TRY-Z)

CEDEC最終日に西川善司さんのパネルディスカッションがあるのは、お祭り感があってとても楽しいです.

西川善司さんのBLOG( http://www.z-z-z.jp/BLOG/ ) で、スライドがすでに公開されているので、出ていない人はざっと目を通してみたら面白いと思う.

今年の話題は、

ってのが話題でした.

話を伺っていて、強く感心したことが2点ありまして「ローカルリフレクションがイメージベースドライティング(物理ベースレンダリング?)の説得力を大きく上げている」(私的要約)という点と「(Morpheusのような)VRヘッドセットでは、スクリーンという概念が無いので Screen Space 関連技術が意味をなさなくなる」(私的要約)という点は、なるほどっと思った.

二日目の、AMD原田さんの『モンテカルロレイトレーシングの基礎』の講演で、VRでレイトレをやっている紹介があったけれども、その時にはやっていることは理解できるんだけど、そのモチベーションが理解できなくて「?」な感じがしていたんですよね.

レイトレってリアルタイムレンダリング系の人たちから見ると、理論的であっても実践的ではないというイメージがあるんじゃないかと勝手に思ってたんです.

それが、VR関連の関心が高まってくると、リアルタイムレイトレへの欲求が高くなってくるってのはとても興味深かったです.

...OpenCLやってみようかな

『執筆のススメ~会社勤めをしながら著述賞をとる方法~』(堂前 嘉樹・加藤 政樹/株式会社バンダイナムコスタジオ)

3日間、がっと集中力を高めて望んでいたので疲れが出てきてしまっていて、飲み会までの時間もあるしクールダウン程度のつもりで参加させていただきました.

緩い感じで聴かせていただいたのですが、ゲーム業界中のキャリアパスについて考えさせられました.

会社員として会社とはうまくつきあいつつ、自分のキャリアは自分で築いていく必要があるんだということを再確認させていただきました.

まとめ?

今年のCEDECは、去年と比べて参加人数が増えていたようで、その理由がスマホゲーム開発者が増えたりだとか、Unityなどの安価で高機能なゲームエンジンのおかげでゲーム開発の敷居が下がっただとか言われているようですが、ゲーム開発者の裾野が広がるのはとても喜ばしいことだと思いました.

反面、今年はレンダリング関連の講演もレベルが高い講演が多く、先端(グラフィックス)技術にぼんやりと興味を持った人が物見遊山で聴講に来たとしたら、置いてけぼり感が強かったんじゃなかろうか?などと、考えてみたりして...

最先端ではないけれども、先人たちの技術を後追いしている人たちが情報を出し合っていけると、中間層が埋まっていくのかな?などと思いつつ、もう少し自分の活動をBLOGなりで発信していきたいなと思いました.

あ~、三日間とても楽しかったし、刺激を受けました.
また、来年に向けて私もがんばっていこうと思います.