CEDEC2015に行ってきたよ(初日)

もはや恒例行事になっておりますが、今年も CEDEC に参加してきました.
早速ですが、初日の振り返りを行っておこうと思います.

『つくる、ということ。』(中村 伊知哉/慶応義塾大学大学院)

10分ほど遅れて会場入りしてしまったので、メインホールで聞くことができませんでした...

基調講演はニコ生での中継もやっているらしいので、見ている方も多かったと思うのですが、
よくもまぁ色々と面白い話が出てくるもんだなぁと感心しながら公演を聞かせていただきました.

話の内容は多岐にわたっていたのですが、私に思うところがあるキーワードを並べていくと

  • 日本のサイネージ化
  • (セガの『トイレッツ』に対して)学生が企画書を書くところまではやる、企業がやるのは日本だけ
  • 2020年の挑戦 → 超人スポーツ
  • 日本人は(本当に)シャイなのか?
  • 多様なものを生み出すのが日本人
  • お母さんのキャラ弁はクリエイティブ

といったことが上がります.

お母さんのキャラ弁の話は常々感じていたことなんですけど、「クリエイティブってのは
なんだろう?」と考えてしまいます.

全編を通して語られていて、「で、おまえは何をつくるんだ?」という問いはかなり重いですね.

中村 伊知哉さんは54才とのことで、こんなにエネルギッシュな人が先人として道を切り開いているのですから我々も頑張らねばいかんなと感じました.

『複数タイトルで使われた柔軟性の高いAIエンジン』(長谷 洋平/株式会社 バンダイナムコスタジオ)

タイムクライシス5”、”Project TREASUARE(仮)”で採用されたAIエンジンの設計についての話でした.
午後にはスクエニさんの講演(『FINAL FANTASY XV - EPISODE DUSCAE-におけるキャラクターAIの意思決定システム』)を聞いたのですが、どちらも BehaviorTree がベースとなっている点と、FSMのアプローチでは全体像が把握しにくくなるという問題点を感じていたということは興味深かったです.

長谷さんのこの講演では、かなり実践的な設計に踏み込んだ内容となっていたので、CEDiL で資料が公開されたら、改めて眺めさせていただこうと思います.

認知科学・心理学からみたコンピューターエンタテインメント:「体験するとは」どんなことか』(渡邉 克己/早稲田大学)

聞きたかった講演(『スクウェア・エニックス AIアカデミーの試み』)が満席になっていたので、泣く泣く
メインホールに足を運んだのですが、かなり面白い講演でした.

いわゆる錯視などを用いながら、人の思い込みとは?といった話をしていただきました.

体験することで知覚が変わる、ワンショットラーニングといった話の中で、「今まで見えていなかったにもかかわらず、一度わかってしまうと自分もあたかも今まで見えていたという思い込みを行ってしまっているのではないか?たまたま(多数決的に)半々だったから論争になるのかもしれないが、これが10%の人がみえていなかったらどうなのか?どのように感じるのかというのは絶対的な決め付けはしないほうが良い」(超要約)といったようなことをおっしゃっていたのですが、とても深い話だと感じて思わず唸ってしまいました.

後半戦では、「好き」と「欲しい」という感情についての話をしていただきました.
ここで単純接触効果の説明として、「新奇性」と「親近感」の話をしていただきましたが、
「顔は見れば見るほど好きになる。(親近感が上がる)背景は見れば見るほど嫌いになっていく(新奇性が下がる)」と説明されたのはとても印象的で、アバター・箱庭ゲームなどで「自身のキャラクターに愛情を持つ」ことと「部屋の模様替えを楽しむ」といったことにこの特徴が現れているのではないだろうか?などと考えていました.

認知科学はちょっと勉強してみると面白いかも….

『コラボレーションによるコンテンツの最大化』(伴 哲/Sony Computer Entertainment Inc.・森 チャック/株式会社 チャックスグラフィート・斎藤 祐一郎/株式会社 スパイク・チュンソフト)

こちらも、聞きたかった講演(『自然言語処理を中心とする人工知能技術の現状とエンターテインメント業界における応用の可能性』)が満席だったのでメインホールに...

今年の CEDEC は例年にもまして人が多い印象を受けました...

パネルディスカッション形式ですすみ

  • 俺流コラボの仕込み方
  • コラボ効果を最大化させるために意識していること
  • こういうコラボはNG
  • あのコラボの裏側
  • こんなコラボがしたい

といったお題目が設定されていたのですが、結局は「キャラクター(コンテンツ)への愛」とか「熱量」という言葉に集約されてしまところに消化不良な感じがしてしまいました.

最後の「こんなコラボがしたい」というパネルで、”トロ”と”モノクマ”と”グル〜ミ〜”のきぐるみが出てきたりしてちょっとしたサプライズとかがあったりもしたんですが...

「キャラクターへの愛」とか「ユーザーへの愛」だったんですかね?

FINAL FANTASY XV - EPISODE DUSCAE-におけるキャラクターAIの意思決定システム』(白神 陽嗣・三宅 陽一郎・並木 幸介/株式会社 スクウェア・エニックス)

前述の『複数タイトルで使われた柔軟性の高いAIエンジン』と対にして資料を眺めると理解が深まると思います.

どちらの講演でも根本的な問題として、「AIの汎用化」だとか「量産するための仕組み」という問題を抱えていてAI制作パイプラインの重要性を感じる講演でした.

細かな話はあとから資料を見直すとして、強く印象に残ったのは

  • (AI)思考の並列化と BehaviorTree
  • 階層型ステートマシンとHTNプランニング
  • キャラクター(表示)制御を行うためにBodyステートマシンとAI Graph の連携を行った事例
  • キャラクターのモーションに対して当たり判定を半自動で生成する仕組み(モーション解析)

といったことが印象に残りました.
上2つはバンナムの長谷さんの講演との対比をしながら聞いていて興味深く感じた点、下2つは話の途中で「で、AIとキャラクターの制御ってどうやって連携させているんだろう?」という疑問に答えてくれた内容です.

この講演の最後のほうで、モーションのエラー検出についての事例紹介があったんですが、このパートだけはまったく理解ができませんでした.
(可視化するところまでは理解できるけど、どうやって日々問題が起きたことをトラッキングしていたんだろう?とか)

物理エンジンの作り方(破壊シミュレーション編)』(津田 順平/株式会社 コーエーテクモゲームス)

もう 7〜8年ぐらい前に、破壊シミュレーションっぽいシステムの実装をしていた経緯もあってとても興味深くお話を聞かせていただきました.

話の構成としては、

  • 固定ジョイントの限界と複合剛体の使い方
  • リアルタイム破壊の構成要素としてのフラクチャーパターン
  • 自重崩壊の種明かし

といった構成になっていたと思います.
最初の複合剛体に関しては、なぜ(一見複雑な)複合剛体という概念を取り入れる必要があったのか理解が追いついていません(あとで資料を見直します)

各分割されたノードごとにJacobian を…といった説明をされていたと思うのですが、そもそも分割されたノードの物理パラメーターを合算して代表ノード(長兄ノード)にまとめるといった方針ではダメなんですかね?
…資料が出たらじっくりと考えてみようと思います.

ラクチャーパターンのパートでは、構成平面による連続切断とソリッドモデラーによる形状演算の話がありました.
私が破壊シミュレーションっぽいシステムを実装していた時には、まさに構成平面による連続切断を実装していて、ある時に限界を感じて「立体物のブーリアン演算ができればいいんだけど…」なんてことを悩んでいました.

破壊シミュレーションに限らず形状演算(和・差・積)がとれると便利だろうと感じていたので、今回の講演を足がかりとして実装してみたいと思いました.

最後の自重崩壊の種明かしは、わかってしまうと誰にでも理解できる内容にもかかわらず、結果は納得感の高い結果が得られてとても面白いと思いました.

…複合剛体についての頭のなかが整理できれば実装できるんじゃないか?などと妄想しながら聞いていましたので、資料が展開されるのを楽しみに待ちたいと思います.

初日のまとめ

今年は混んでいるようなので、聴きたい講演には早めに並ぼうと思いました.

そんなわけで、あしたも参加してきます