CEDEC2015に行ってきたよ(3日目)
体調を崩してしまったりだとか、私事でばたばたしておったりだとかで報告が遅れてしまいましたけれども、CEDEC2015 の最終日の雑感などを書いておこうと思います.
...なんか CEDiL が不具合のためアクセスできなくなっているんですね...
参照したいスライドとかがあるので早めの復旧を祈ります.
『妖怪ウォッチ ゲーム・アニメ・映画・漫画・玩具 〜各界クリエイター共同戦線〜』(日野 晃博/株式会社レベルファイブ)
朝、電車事故なんかと重なったりしてしまったのと、今年は 『Project Morpheus』のデモを是非見てみたかったので整理券を貰いに行っていたりとかで、中盤過ぎてから第二会場の方で講演を聞かせていただきました.
(ゲーム業界以外の)他の業種の方たちとのコラボレーションをどのように進めていったのか?という体験談を聞かせていただいたのですが、いろいろなことをやってきたんだなぁと改めて感心させられましした.
ちょっと気になってwikipediaなんぞを調べていたんですが、創業が1998年で自社パブリッシング事業を始めたのが2006年...まさに破竹の勢いで成長して来たんですね.
変化の激しい業界の中で、独立系として事業を初めて17期目というだけでもすごいことなのにもはや、ちびっこたちでは知らない子がいないんじゃないかってぐらい超有名企業に成長してますから、いやはや日野さんの経営手腕たるやすごいものですよ...
話を聞いていて思ったのが、ブランディングが抜群にうまいんだろうな...ということを感じました.
そして、業界の慣習とは別の方向だろうと自身が「これだ」と思ったところに突っ張れる度胸とかすごいと思いました.
『FINAL FANTASY XV -EPISODE DUSCAE-のエフェクトはこうして作られた〜Luminous VFX Editorの紹介〜』(長谷川 勇,野副 竜太,小野 哲平/株式会社スクウェア・エニックス)
スクエニさんの Luminouse VFX Editor の紹介とともに、どのようにVFXのアセットが作られたのか、そこにはどのような苦労があったのかといったポストモーテム的な内容と、VFX Editor 自体の設計思想とか実装上の苦労といった内容の講演でした.
面白く感じたのは、『Luminouse VFX Editor』は言ってしまえばパーティクルエディタに近い(延長の?)概念のツールなのにノードベースでVFXの設定を行うという点は興味深かった.
パーティクルシステムの設計を少しだけやったことがあるんですけど、そのときにシーングラフ(ノードグラフ)の拡張としてパーティクルシステムが作れないものか...なんて考えながら設計&テスト実装をしていたんですけどやってみると「ライフタイム管理が面倒だな…」といった壁を感じていたりもしました.
また、その前にも「ノードベースでシーケンサーが作れないかな?」なんてことを思い立ったこともあったんですけど、ノード(グラフ)で波形編集を行うような演算処理を組み込もうと思うと実装しているときの気分は良いんだけれども、動かしてみると演算処理がボトルネックになってきて壁を感じるとか、ノードベースのシステムってのは単に想像するよりも落とし穴が満載なんじゃないかと思います.
同じくスクエニさんのAIのツールでもノードベースでツールが設計されていましたが、そんなこともあって講演終了後に「これからはノードベースのツールの時代なんじゃね?」なんてことを話している方たちも見受けられました.
…社内ツールを1からノードベースで設計して使い物になるようにするのはかなり大変だよな...
とても考えさせられる講演でした.
『Project Morpheus』
朝に Project Morpheus の整理券をいただくことができたので、昼休みを利用して体験会に参加させていただきました.
…これは想像以上にすごかった、『サーマーレッスン』の世界から帰れなくなってしまう人が続出するんじゃなかろうか...
となりにスタッフの方がたっていたり、周りに人がいなかったらもっと変なリアクションをとってしまっていたんだと思うのです.
思わず体が動いてしまう
ネットで画像を見ていたときには、女の子の造形があまり好みじゃなかったんですが、体験終わってみるとすっかり恋に落ちてしまった感じですよ.
あ〜、可愛かった
『いまどきのゲーム制作環境:エディター群とそのバックエンド、開発スタッフ間のコミュニケーションの具体的な方法解説』(市山裕介,是松匡亮/株式会社カプコン)
とても興味深い講演だったので CEDiL に資料が公開されたらじっくりと読む.
面白いなと思ったポイントはいくつかあるのでさしあたって思いつくところを並べておく.
- Undo & Redo の設計はめんどくさがらずに最初からやる
— コマンドの設計
- アセット共有の問題点
— 既存のマージツールだと構造を判断しないので自作ツールを用意
— ただしマージで何でも解決しようと思わないこと
- テレメトリ環境
— NASにテキスト保存だと限界があるのでMongoDBに保存
— フォーマットを規定して可読性を高める
- ネイティブキャッシュ
— 最終成果物は保存しない(生成できるものは保存しない)
— 実行時生成では時間を浪費してしまうのでネイティブキャッシュという仕組みを導入
タイトルにあった「開発スタッフ間のコミュニケーションの具体的な方法解説」の部分に関しては、時間が不足したので割愛したとのことだった.
CEDiL 公開時には、この点も含めて資料を公開していただけるようなので公開を待ちたい.
『インハウス継続的インテグレーションツールによるゲーム運用全般の自動化について』(松井 敏/株式会社コナミデジタルエンタテインメント)
「『デイリービルド』という言葉のイメージだけで社内のCIツールの作成&運用を数年行ってみてたまった知見をシェアします」といった内容の講演だったと思うのですが...
「"コマンドライン ${ツール名}”とかでググると、バッチ処理でも結構がんばれます」と話されているのを聞いて想像していた内容と齟齬がありすぎて途中退出させていただきました.
決して悪い講演ではないとは思うのですが、ミスマッチが発生してしまうのは仕方がないことです.
失礼いたしました.
『大規模タイトルのバックエンドを支える最新オンライン技術について』(永谷 真澄/シリコンスタジオ株式会社)
最近、サーバ関連技術やインフラ関連技術を少し追っているので「せめてキーワードだけでも拾えれば…」と思いながら途中参加させていただきました.
存在自体はなんとなく聞いたことはあったのですが、シリコンスタジオさんでは MongoDB をかなり積極的に採用されているという話を聞いて驚きました.
(課金処理などの)トランザクション処理が必要になる場合だけ、MySQLを使われているとのことで、RDBとNoSQLの棲み分けってのが進んでいることを感じました.(いまさら?)
KVSでは Redis (なんじゃそりゃ?)を使っていて、言語(フレームワーク?)的には Node.js, Scala をメインとしていて 「LAMP環境はほとんど使っていません」という言葉に驚きました.
途中参加ではありましたが、とても参考になりました.
『Vulkan: High-Efficiency GPU Graphics and Compute - glNextとして発表されたVulkanって?』(大渕 栄作,桑原 良彦/株式会社ディジタルメディアプロフェッショナル)
2015年のGDC前までは、「glNext」と呼ばれていた Khronos が進める次世代の3D APIである 『Vulkan』 の概要説明と、これまた Khronos が進めているシェーダーの中間言語表現『SPIRE』のVulkan版の 『SPIRE-V』の概要説明でした.
Vulkan は2015年のSIGGRAPH でAPIの発表を...という話だったようですが、どうも絶賛仕様策定中という状態になっているようで Spec の確認が行えるのは、2015 late という話です.
Vulkan は勝手に 「Open GL のコンテキストをオブジェクトベースに置き換えた感じになってるのか?」などと妄想していたのですが、話を聞くとハードウェアとOpen GL の中間層に当たるようなミドル・ミドルウェアといった印象を受けました.
これを使って直接ゲームのアプリケーションを作る人は少ないんだろうな...
ゲームエンジン屋さんとしては動向をウォッチしておいた方が良さそうですが、CEDEC2015の時点で Apple が各種デバイスへの対応を言い出していないことから、実際に手を動かして…というよりも生暖かくウォッチを続けて行けば良いのかな?などと感じました.(Appleは、Metal を打ち立てているからなぁ)
とはいえ、Androidは「Vulkan」対応を発表したようですね.(会場でも、google がデモを行っていたみたいです.)
『SPIRE-V』については、お話を伺っていたもイメージがわかなかったのです.
...『SPIRE』はあくまで中間言語表現なのでこの後にバイナリになるわけで、 glProgramBinary とかで最終結果の読み込みを行えるみたいな感じのパイプラインを想像できるんですかね?
glProgramBinary は現時点でポータブルじゃない(どこでも使えるわけじゃない.ES対応してないと思ったし)ので、EGL本家が『SPIRE』のサポートをしてくれたりしないんですかね?
glessl 書いたり、glsl 書いたり、hsl書いたり、Cg書いたり...もう疲れたよ...
シェーダーをコンパイルする流れを開発者が握れるのは結構魅力的なんだと思うんですけど、そのためだけに Vulkan 対応を行うってのは労力が大きすぎて気軽にはやり始められないなぁ...
『双方向パストレーシング(BDPT)の基礎からOpenCLによる実装まで』(Takahiro Harada/Advanced Micro Devices, Inc. 池田翔/株式会社リコー)
CEDEC2014 の『モンテカルロレイトレーシングの基礎からOpenCLによる実装まで(実装編)』の続きです.
今回は双方向パストレーシングの話でした.(レイトレ話で3年連続だぜ.漢気あふれてるぜっ)
今年の解説も丁寧だったと思うのですけれども、そろそろついて行くのがつらくなる人が続出しているんじゃなかろうか…などと考えながら聞いておりました.
レイトレ面白そうだよなぁなんて思いながら早数年…完全にやるやる詐欺になってしまっております(反省)