転職は1億円損をする
- 作者: 石渡嶺司
- 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
- 発売日: 2008/10/10
- メディア: 新書
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SPAを読む感覚で読めるんだったら割と面白いかもしれない.
第一章部分で、退職金や各種補助制度のデータを元に、転職は基本的に損をするということを客観的に示そうとしていると思うのだが、退職金がない会社に就職している読者や、住宅手当/通勤費に恵まれない読者も数多くいるはずだろう.
筆者の論法では、退職金や各種保証に恵まれている会社から、恵まれていない会社に転職した場合には損をするという事が示せても、恵まれていない会社から、恵まれている会社に転職する会社への転職がフォローされていない点に疑問を感じる事になると思う.
この章は転職予備軍が読むべき部分は少なく、これから就職活動を行う(前の)学生のための章だと思う.
学生が手に取れば良書だけれども、転職希望組が手に取ったときには疑問が残るとなると、煽り文句としては失敗なんだろうなぁと思う.
書いてある内容は、それなりに良いことが書いてあると思うんで、キャッチコピー負けしてしまって本来ならば届いて欲しいユーザに届かない(だろう)というのは、とても惜しい気がする.
個人的に気に入ったのは、上司や先輩社員のおこごとに嫌気がさして転職を考えている人に対して、上司や先輩のお説教は、時給換算5〜15万ぐらいの価値だという一文の紹介.
(残念ながら、本書独自のモノではなく、『週刊 SPA』2008年6月17日号からの引用)
コンサル会社に依頼して、マンツーマン指導を行った場合に発生する費用なんだそうな...
だから、おこごともありがたく聞きなさいって意味で気に入ったのではなく、日頃研究という名目で適当に遊んで暮らしているけれども、(暇に見えるのか)知識不足の社員達の指導をよくお願いされる身としては「(自分は)ただ飯くってるわけじゃないんだ...」などと暢気なことを考えてしまった
第二章目以降は、人材派遣会社のからくりや、いまどきの転職観について語られているけれども、このあたりもタイトルの煽りとはかけ離れている気がする.
要するに、「キャリアアップ」とか「なりたい自分」ってのは人材派遣会社の煽りだから冷めた目でみなさいってな話だ.
このあたりは、第二新卒予備軍には良い内容になっていると思う.
けれども、個人的には、日常的な仕事内容にもこなれて後輩や始めて部下を持ち始める入社3〜6年目ぐらいの社員に読ませたい.
恐らくそういった人たちも何度かは「転職」が頭をよぎったことがあると思うし、このあたりから後輩や同僚から「転職」に関する相談を受ける時期だと思うからだ.
自分の転職観だけでなく、他の人の転職観を眺めておくのは、そのときの助けになるかもしれない.
...とはいえ、本書は週刊誌感覚で眺めるのが正解.
ま、まずは参考文献の一覧を眺めてから読み始めれば、私の言わんとしていることがストレートにわかる筈だ.