SIG-iPhone App 第7回セミナー「AppBankを運営する中で見えてきたiPhone市場、AppBankのこれから」メモ
概要
IGDA日本の主催する SIG-iPhone App 第7回セミナー「AppBankを運営する中で見えてきたiPhone市場、AppBankのこれから」に参加してきたので、メモの公開と雑感のまとめを行う.
自分のメモと頭の中を整理しているだけなので、実際にAppBankの中の人が喋ったこととは一致していない(し、それを目的としていない)
PodCast で当日のビデオを流すらしいので、変なバイアスが掛かっているのが嫌だったら本家を当たるのが吉.
基本情報
開催日 : 2010年2月22日(月) 18:00 〜 20:00
場所 : 場所:Apple Store, Ginza 3階ホール
主催:国際ゲーム開発者協会日本(IGDA日本)
講演者 : 株式会社GT-Agency 代表取締役 村井智建氏(AppBankの中の人)
公演中に取っていたメモ
- 『ディベロッパー総ゲリラ戦状態状態』
(追記)
この点は納得.
...というよりも、自分の認識に対する確認のようなもの.
恐らく、大手ディベロッパーもこんなことを思っているんだと思う.
総ゲリラ戦状態ってことは、(現状では)大手の方が辛い思いをしているんだと思う.
現段階で、iPhoneアプリディベロッパーの勝者はっていえば、他の仕事をして(生きる手段を確保して)いるサンデープログラマーなんだろうと思う.
彼(彼女)らにしてみれば、元々売れようが売れなかろうが、どれだけ利益があろうが、どれだけ(労働力の)持ち出しになろうが創る喜びと、幾ばくかの売上げが立つっていうのは魅力的な市場なんだろうな.
よくいわれていることだけれども、「世界規模の同人市場」ってのは、現状をうまく表現していて、規模が大きくなるほど徒労感が大きいんだろうな.
100万円が(副業による)臨時収入のお小遣いだったら嬉しいけれども、企業が生きていくのには正直つらい.
AppBank のユーザ動向
- アクセス数の集計のお話
- 過去の記事の再読が57%程度
- 当日レビューで12%程度
- セールス情報 8%程度
- (当日の)グラビア 5%- グラビアは見て逃げられる傾向が強い
- グラフから30代に強い印象がある
- iPhoneからの閲覧が多い
- windowsからのアクセスが意外に多い
- グラビアアプリに付加価値があるものは落とされやすい
(追記)
AppBankのユーザ比率的に30代のユーザ層が高いってのは、インプレスのiPhone市場調査にもマッチしているみたいだしiPhoneユーザ層がほぼ反映されていると考えても良いと思う.
グラビアアプリ比率が高いのは、単純にiPhoneユーザは男性ユーザ比率が高いってことなんだろうな.
widnowsからのアクセスが意外に多いのは、macユーザが少ないんじゃなくって、職場での閲覧が多いんだと思う.
(mac比率が高いって言いたいんじゃ無くって、家庭の環境はここからは分からないって言いたい)
グラビアアプリに付加価値があるものが落とされやすいって言うのは、「ダウンロードする口実があるから」のようなことをAppBankの人が言っていた.
iPhoneアプリの『Puff!』なんかを例として取り上げていたけれども、この点は納得.
ていうか、iPhoneユーザは「人に面白いアプリを自慢したい」衝動ってのが強いんだと思う.
コンテンツの消費スピードの加速
- アプリは供給過多状態になっているが、ユーザの消費スピードも上がっている
- ユーザーの中での使い捨てが起きている
- なんとなく買って、なんとなく捨てる- たえず色々なものがうまれで、一瞬で消費される
- ユーザの目が肥えているから、アタリショックは起きないと思う
- (良質なコンテンツは残るし、認められる)- 面白いアプリ、良いアプリが残る
- 安いコンテンツ、無料コンテンツが自浄作用がある
- 安いから外してもがっかり感が少ない
- 100円のジュースを買って外すよりも、100円のアプリを買って外す方がショックが少ない?
(追記)
コンテンツの消費スピードが早く使い捨てされている現状を見ると、「この市場に未来はあるのか?」なんてことを思う.
腰を据えて買うコンテンツは無い(少ない)のだろうか?
疑問点としては、「ユーザが(企業名などの)ブランド価値をどう捉えているのか?」ということが思い浮かんだ.
一度、ディベロッパーがユーザを見放したコンテンツを作った時の救済措置はあるのだろうか?
ユーザはそういったディベロッパーに対して不買運動をするものなのか、もっとドライにコンテンツの消費活動を行えるのかって点には興味がある.
AppStore には、会社名毎のカテゴリはあるから気にする人は気にしそうだけれども、アプリの瞬間最大風速的にはあまり関係ないような気もする...
まぁ、ユーザを馬鹿にしたコンテンツを作るつもりもないし、瞬間最大風速だけを求めたアプリを作る気も無いのでこの疑問にはあまり価値が無い.
ユーザ動向からみる売れるアプリ条件
- ユーザは、アイコンとアプリ名を見てアプリを買う!?
- アイコンによるヒキが売上げの20〜30%をしめる位ではないのか?
- ユーザはアイコンに対する執着がすごい
- とくにホーム画面(2〜3ページ目)に対する執着がすごい
- 機能が豊富に揃ったアプリよりも、機能は必要十分でアイコンがきれいなアプリの方が残る
- とにかくアイコンには金を掛けた方が良い
- アプリ名によるヒキが売上げの20%程度を占めるのではないか?
- 3分でアプリの魅力を伝えられなければ捨てられる
- 1以上のことは伝わらない
- (たくさんのことを伝えようとしても伝わらないので、ポイントを絞る必要がある)
(追記)
自分自身がアプリを買う時の流れを考えても、この部分は納得.
ホーム画面に対するこだわりってのは、重要な再確認だった.
(アプリ開発をしていると白いアイコンが画面上にいっぱいならんでしまうので、気にするのをやめてしまった)
確かに、アプリ開発を行う前はホーム画面の並び順とか気にしてた.
「ダウンロードして3分間でアプリの魅力が伝えられなければ、ユーザはそのアプリを捨てて次のアプリを探す」といった行動は、かなりアーケードゲームに近いと感じた.
アーケードゲームにも名作が数多くあるように、iPhoneアプリにも名作があり、歴史に残っていくのかもしれない.
収益的に辛い点としては、アーケードゲームはもう一度プレイするために100円を払ってくれるけど、iPhoneアプリはアプリ内課金とか特殊なことをやらない限りは1回限りしか課金してくれない.
(だから、外れのアプリを引いた時の100円の価値ってのをユーザが安く見積もってくれるのかもしれない)
アプリを売るための施策
- マーケティングは重要だと思う
- ディベロッパーはマーケティングを軽視している気がする
- いかにしてAppStoreのランキングに乗るのかということを考えるのは重要
- 売上ランキング25位にどのように載るということは重要
- アプリ販売における重要なタイミングは次の三つ
1. 新規リリース(1番重要なタイミング)
2. セールス情報と上手くつきあうこと
3. アップデート
(追記)
「マーケティングの手法が確立していない」といった様なことを言っておいて、「マーケティングが重要」というのは少し違和感を覚えた.
恐らく、"マーケティング"という用語にたいしての齟齬があるんじゃなかろうかと...
「売るための手法 = マーケティング」として捉えている人が多い中で、「どうやって売ったらよいのか?」「どのような販売戦略を立てたらよいのか?」といった手法が確立されていないということと、「顧客が求めているモノを探る手法 = マーケティング」として捉えた場合のマーケティングが重要という意味なんだろう.
(要するにドラッガーを読めと)
少なくとも、AppStore のランキング情報はユーザの動向が反映されている筈なので、もう少しランキングをウォッチする必要はあるかもしれない.
そして、(先ほどAppStoreを眺めていたんだけれども)地域ごとのランキング差ってかなりあることに気がついた.
この点は、少し注意すれば気がついていた筈なので注意することにしよう.
新規リリース時に関する(AppBankの)雑感
- 新規リリースでバグかなく、なるべく多くのメディアに取り上げてもらう
- 世界規模で見たときにも、AppBank経由でかなりの数のアプリが買われている
- 海外には AppBank と同機能のサイト(競合っちうのか?)は少ない
- 日本のディベロッパーは世界中のディベロッパーの殺気を感じた方が良い
- 日本のディベロッパーが日本のユーザに対して有利な点があると考えるのは間違いで、日本語に対する多少の有利がある程度と捉えておいた方が良い
- アプリを露出してくれたメディアへの対応の温度差が海外と日本では異なる
(追記)
自分のアプリを露出してくれたメディアへの対応という面では、大手が不利で個人が有利なんだろうと思う.
アプリの企画立案から本制作、ユーザ展開までまとめて(責任を持って)行ってる方が有利なんだろうね.
概して大手はスマートな手法の方を好む傾向にあると思うので、熱量をもった対応ってのは体質的に苦手なんじゃないのか?
課題としては、「海外事情を把握する術を確立する」ってのが思い浮かんだ.
セール情報に関する(AppBankの)雑感
- ユーザはセールが大好き
- 発売記念セール等は引きがあるかもしれない
- ゲームロフトの戦略には見習うべきところがある
- EAの対向としての値段戦略
- セールにかける執念が違う
- デイフェンス的なセールの使い方が上手い
- EAがレースゲームをリリースすれば、それよりも自社のレースゲームの値段を下げるとか- セールのクラスタは多いので、値段は少し高く付けるのが有利かもしれない
- 115円アプリをセールするには無料配布するしかない
- 無料配布直後はランキングが上がるが、価格を戻すとランキングが下がる
- 200円アプリは、(有料)115円の価格に値下げが行えるので、結構良い値付けかも
(追記)
(AppBankが計画している)『ポケットベガス』は、アプリ無料でアプリ内課金を行うモデルという点に注意する必要があると思う.
話の流れ的には、「200円アプリです」っていう流れでしょ?
話を聞きながら、アプリ内課金についての疑問点が頭の中を巡っていた.
「月額課金は駄目だろう」みたいな発言もあったと思ったので、このあたりは注意深く考察しておくことにしたい.
関係ないけど、ハドソンがアプリ内通貨のようなことをやろうとして Apple からリジェクトされたって噂を聞くと、AppBankの『ポケットベガス』構想ってのは大丈夫なのかと不安になってしまう.
アップデートに関する(AppBankの)雑感
- アップデートの多さはユーザの満足度が高い
- アップデートは、ディフェンス的な意味合いが強い
- ユーザを『褒める』ことの効果
(追記)
アップデートに対してユーザが高い満足感を示すという点は納得.
アプリの"売り"となる部分を先行してリリースして、ユーザ動向に合わせながらアップデートを繰り返すという手法は、アプリ開発なのにwebサービス運営のノリに近い気がする.
満足度が高いことが分かるけれども、短期的に見れば所詮はダウンロードしているユーザに対するサポートなので新しく収益を生み出さないってのがキモの部分だと思う.
幸い市場が大きいのですでにいるユーザの満足度が上がることは、新規ユーザの促進に繋がるんだろう.
...で、ここでも前出の疑問があるわけですよ.
- アプリユーザはディベロッパーに対してブランドイメージを持つのか?
- 使い捨てされるアプリの市場でブランドイメージが確立できるのか?
なんとなく、マイナス方向のブランドイメージは働く気がするんだけれども、プラス方向のブランドイメージは働きにくい気がするんだよね...
好きで買い集めていった結果、特定のディベロッパーのアプリが残ったって状況はありそうだけれども、特定のディベロッパーだから購入するってのはなさそうだよね?
迷ったときに、特定のディベロッパーだから安心して購入する(しない)ってのはありそうだけれども、(現状のアプリ市場が)単価が低くて消費サイクルが高い商品が並ぶんだったらディベロッパーなんてあんまり気にしないっていうか、迷っているリードタイム(っちうの?)ってのは極端に短いんじゃないの?
(駄菓子を買うときにメーカーを気にしないように)
紹介されて気になったアプリ
- "Peggle" (PopCap Games)
- "Bejeweld2"(PopCap Games)
- "HOMERUN Battle 3D"(Com2uS Corp)
- "SmackTalk!"(Marcus Satelite)
(追記)
落として遊んでみることにする.
くやしいからリンクは貼らない.
まとめ
とても有意義な時間を過ごすことができました.
会場到着が遅れたので、二時間立ちっぱなしになってしまったのですが、十分価値があったと思います.
AppBankの中の人は、「"iPhoneアプリってもうかりますか?"と聞かれたら、"儲かりませんからやめた方が良いです"」と言うことに決めているそうですが、「儲かるからやる」のではなくて「儲かるためにやる」とか「魅力があるからやる」といった人たちに参入してもらってiPhone市場を盛り上げたいっていうのが真意なんだろうな...なんてことを感じました.
ってかね、たぶん世の中にはそんなにウマイ話なんてものは無いんですよ.
「儲かるならやりたい」ってのは多分成功しないんじゃないかと思うわけです.
iPhone市場が儲かるのかなんてことは分からないけれども、iPhone市場でも儲けることができるんだと信じているわけです.