CEDEC2014に行ってきたよ(初日)
今年もCEDECに参加してきました.
...多分、2002 あたりから毎年欠かさず連続で出席しているので、もう12年ぐらいになるのか...
もはや夏の最重要行事になりつつありますよ
さて、そんなわけで本日聴講させていただいた講演を軽く振り返っておくことにします.
(基調講演)『物語の力』(冲方 丁/作家)
『天地明察』とか『光圀伝』の冲方さんですね.
作品はとても楽しく読ませていただきました.
...しかし、ゲームのお仕事をされていたとは存じ上げませんでした.
(wikipediaで調べたところ)『シェンムー』とか『カルドセプトサーガ』のシナリオとかやられていたようですね.
勉強不足でございました...
さて、講演の内容を無理矢理要約してしまうと、
物語は偶然を必然に結びつけるための力であり、現代の物語のありかた(成り立ち)や物語を紡ぐ力を考えると、ゲームというメディアはとても可能性があるメディアだと思うから、開発者のみなさんはがんばってね
って感じの講演に聞こえた.
印象的な言葉をピックアップしておくと、「サイコロが人にリアリティを与える」「サイコロが(人に)固有の体験を与える」という言葉はとても印象深かった.
ちょうど会場までの電車のなかで、『レベルアップのゲームデザイン』(オライリー・ジャパン)のストーリーの章を読んでいたところだったので、冲方さんの視点は興味深く聴くことができた
ただし、テレビゲームがインタラクティブメディアであることを覚えておいてください。ストーリーの天才、ウィリアム・シェイクスピアはハムレットの中で、「The play's the thing.(劇こそまさに、うってつけだ)」と言いました。残念ながら彼はテレビゲームを一度も遊んだことがありません。
(『レベルアップのゲームデザイン』より)
『俺屍2のスタイライズド・レンダリングを越えてゆけ』(深澤 正俊・坂本淳・鈴木慎平/株式会社アルファ・システム)
ちょいとVITAの周辺環境を調べたりすることがあったり、またちょうど調査の対象がノンフォトレンダリング関連だったりして、興味があったので聴講させていただきました.
...スタイライズド・レンダリングって言葉は何となく慣れないんですが、ノンフォトレンダリングというよりも一般的になっているのかしら?
内容は割とついて行けた気がしているんですけど、キャラクター(?)のイメージベースドインキングの当たりで「あれ?レンダリングパスの解釈が違っているのかも...」なんて事を考えてちょっと混乱してしまいました.
Color Modification関数は結構面白そうなので、近いうちに試してみたいと思います.
技術面からは離れて、論文を収集するだけしてみて調査対象をアーティストに(論文の)図を見せて関連性が高いか聴いてみて関連論文の絞り込みをしたって話は、ちょっと面白かった.
論文読んで実装してみてって、結構時間が掛かる工程だから前評判とか直感に頼るしか無いんだよね...
私も今度やってみようと思いました.
また、「ノンフォト系のレンダリングは、正解の定義をすることが重要」といったことを話していて、とても共感をおぼえました.
...でも、正解を定義するための参考資料を集めたり、DCCツール上で絵づくりをするのって経営層にはなかなか理解されない壁があるんだろうな...
『"次世代のライティング"実用的速度で動作するボクセルコーントレースライティング解説』(ジェームズ マクラーレン・吉田謙太郎/キュー・ゲームズ)
(ボクセル)コーントレースライティングは、なんとなくの知識しか無いので、理解が追いついていきませんでした.
先日発表されたPS4『トゥモローチルドレン』のレンダリング技術解説に該当しているとのことです.
(参考)
http://ebitsu.net/archives/12165990.html
この後の講演でも、PBRとかコーントレースとかの話題が何度となく上がっているので、「興味はあるけど他にやってみたいことがあるから、とりあえず後回しで...」なんて言っている状況じゃ無くなっている気がしてきました.
さすがに手が回らなさそうなので、実装して、実験して...ってのは後回しにせざるを得ないんですが、基本的な部分ぐらいは追っておこうとおもいました.
『「deep down」のグラフィックス表現の技術解説』(三嶋 仁・阿久澤 陽菜/株式会社カプコン)
カプコンさんの新エンジン"Panta Rhei"の技術解説ですね.
こちらも昨今の時流に乗って(?)PBR(物理ベースレンダリング/Physically Based Rendering)が採用されているとの事でした.
Tile Based Differed とか、もはや一般的なテクニックになってしまった感がありますね...
(Forword+ の現状ってどんな感じなんだろう?)
個人的には、"Screen Ambient Obscuration"(この辺かな? https://research.nvidia.com/sites/default/files/publications/paper_0.pdf )とか、"Screen Space Reflection"(Kill Zone 参考で良いのかな? http://www.guerrilla-games.com/presentations/Valient_Killzone_Shadow_Fall_Demo_Postmortem.pdf ) は、トピックとして情報収集しておく必要があるかな....とか考えていました.
CEDiL でスライドが公開されたら、もう一度講演の内容を振り返ってみるつもりです.
後半戦の、コンピュートシェーダーを利用したファーの話は、(ファーを使う用途があれば)すぐに実践できそうな内容でとても良かった.
シミュレーションは、「全フレームの位置差分だけ計算しているのでとても軽い」と言っていましたが、見た目も良くてとても面白いと感じました.
どこかでつかってやろう
『Android で安定した動作を行うためのレンダリングエンジン設計、及び低消費電力化の必要性と測定機材について』(山下 武志/株式会社 トップゲート・安川 貴志/合同会社 ディワード)
最近は、ひまを見つけてAndroid環境をいじって遊んでいることもあって、聴講させていただきました.
私が設計しているエンジンでは、 GLSurfaceView + NDK の構成となっていて、完全なゲームアプリなので View の初期化後は、NDK層でほぼ処理を完結させてしまうといった設計になっています.
去年あたりに、ゲームアプリ以外で3Dを利用するAndroidアプリを書いた時にも、3D表示は(WebViewなどの)Viewにオーバーレイさせれば要件を満たしてしまうものだってので、(OpenGL初期化以外の)3D処理はNDKで行い、他はJava層で行うといった設計にしてしまいました.
とはいえ、iOS / Android / osx / win (ただし、osx / win は開発用途)などのマルチプラットフォーム対応を行おうと思うと、Java層がメンテナンス性が悪くて、「NativeActivity に切り替えたらもう少し楽できるのかなぁ...」なんて事を考えていたんです.
そしたら、講演の開始直後から「NativeActivity は使うべきでは無い」って...
謀らずとも講演の内容に似た構成でエンジン設計をしていたのですが講演の内容はとても興味深く、手を動かして検証しておきたいネタをいくつもいただきました.
...後半戦の「低消費電力化」の話に関しては...う~む...
CPU or GPU の処理負荷が下がる = 低消費電力化に(も)つながるって話なだけなんだよなぁ...
しかし、ゲームは環境とかスマホの電力事情に優しくないってのはありますね.
『シリコンスタジオの最新テクノロジーデモのレンダリング技術解説』(安田 廉・田村尚希・川瀬正樹/シリコンスタジオ株式会社)
GDC 2014 でシリコンスタジオさんが発表した技術デモの改良版の発表&技術解説です.
(参考)
http://www.4gamer.net/games/032/G003263/20140324070/
4Gamers さんでもすでに今回の記事が上がっていました
(参考)
http://www.4gamer.net/games/032/G003263/20140902047/
こちらのエンジンも先のカプコンさんの"Panta Rhei"と同じく PBR が根底となっているとのことです.(トライエース 五反田さんの先見の明っちうか時代の牽引力というか...は凄いな...)
やっぱり、PBR周辺技術は実装してみたいなぁ...
ひとまず、DECiLでの資料公開を待って、スライドをじっくり眺めてみたいと思います.
初日まとめ
CEDECは楽しいなぁ
また、明日も参加してきます