SIG-GT9 「ゲーム開発における数学」にいってきたよ


IGDA日本ゲームテクノロジー研究会(SIG-GT)第9回研究会「ゲーム開発における数学」に参加してきました。

会場は、東京駅近くにあるCG-ARTS協会で行われました。


研究会は、3部構成になっていて(4部?)

  • ハイパーコンテンツの長久勝さんによる「数学と付き合う方法」
  • オー・エル・エム・デジタルの安生健一さんによる「グラフィックス対話処理技術の数学的基礎-PCAとRBFを例に-」
  • パネルディスカッション モデレータ:久代忠史 パネラー:長久勝/安生健一/今給黎隆

といった感じで、構成されていました。

感想から言ってしまうと、かなり消化不良な感じのセミナーでした。
ちうのも、ターゲットがどこにあるのつかめなさすぎな気がします。

IGDAのリリースによれば、

高校数学の微積分程度の知識を前提として、参加者の皆さんが、この研究会を通じて、数学を道具として実務に使うためのアイデアや考え方を持ち帰れるよう、準備を進めています。

とあったので、「道具としての数学」に対するアプローチがあるものかと思っていたんですけど、少しイメージとずれていたようです。

まず、AIセミナーでおなじみの長久さんによる「数学と付き合う方法」ですが、「数学はじょうしみたいなもの」として結論をあげ、うざいけれども無視できないから、上手に距離感をもって付き合いましょうという提案がされました。

話の中で出てきた、数学の仕組みの下りは、「数学」という広大なフィールドを見渡すための道しるべにはとても良かったと思いました。
私みたいにプログラマになっちゃったから数学が必要になっちゃったって人は、代数学だとか解析学だとか言われてもどういった関係にあるのかなんてわかんなくって、すぐに道に迷っちゃうし、こういうくだらないところで時間をロスしていることって結構あったりするんで、ありがたかったです。

でも、(恐らく本題の部分の)「力強い数学」のススメのあたりからは、かなり退屈な話に感じました。

例えば2Dシューティングゲームを作っているときも、無意識に微分方程式を解いているってことと同じで、数学のフィルターから見ると難しそうで敬遠しがちだけれども、プログラムとして書かれてしまえば、それほど難しく感じること無く理解できることが多いんじゃないかって話をあげられていました。

ほかには、「全校生徒の身長、体重、腹囲、足長から、各属性間に関係があるのか知りたい」といった例題から、散布図を用いて最小二乗法の説明をされたり、それを通して統計学の雰囲気を伝えたり...


次の、安生さんの「グラフィックス対話処理技術の数学的基礎」は、基本的には去年のCEDECで安生さん自身が行った同名のセミナーと同じ内容でした。

例として、「ペイントブラシによる演出可能なトゥーンシェーダー」と「落書き(Doodle)を学習する」Doodle Sketchがあげられ、その技術背景にある数学の解説をされていたんですが、あの説明でついていける人は、こんなセミナーに参加しなくても十分に数学を現場で使いこなせる人なんだろうと感じました。

私には、ハードルが高すぎて、全くついていけませんでした。


個人的には、このセミナーでは、もっと具体例を交えた「道具としての数学との付き合い方」を示してほしかったと思う訳です。
私には、具体的にどうだったらこのセミナーにたいして満足できたのかを、うまく伝えることはできませんが、面白そうな問題と、それを解く手段としてどこまで押さえていれば道に迷わずに済むのかってことを示すことが大切なんじゃないだろうかと考えました。

今まで参加させていただいたセミナーで示すと、シリコングラフィックスの田村さんの解説は、数学嫌いをつくらずに、数学を道具として使う方法を示していると思います。

セミナーを聴いただけじゃ、すべて理解できる訳無いんだし、あとから自習する必要があるんだから、「これを実現するためには、○○をする必要があって、そのために数学の××を利用することにします」って程度で良いと思うんですよね...

例えば、グラフィッックシーケンサーみたいなものを作りたいなぁなんてことを考えたとして、なんとなく、波形解析が必要になって来て、そのためにはフーリエ変換が必要になって...ってぐらいは、何となくでたどり着けると思うんです。
でも、その入力ってどうやってどこから持ってくれば良いのかとか、その出力で何が得られて、どんな風に利用できるのかってのが、難しいと思うんですよね。

そこを誰かが、何らかの形で、手を貸してくれることでフーリエ変換をインターフェースとして使えるようになったり、中身の理論を勉強して補ったりとかができると良さそうだなぁと思いました。


恐らく安生さんの講演は、そういった趣旨で組み立てられていると思うんですけど、話が難しすぎて、逆にアレルギー反応を起こしてしまいそうな気が...

そんなわけで、人にものを伝えるのって難しいなぁと感じたセミナーになってしまいました。