『Game Developers Conference レポート for iPhone Games』メモ(最終回)
概要
前回/前々回に引き続き、『Game Developers Conference レポート for iPhone Games』に行ってきましたよメモの公開
今回は、
『Game Developers Conference報告 for iPhone (2)』大前広樹氏(株式会社KH2O代表取締役)
の部分に関して.
GDCの全体的な雑感
- iPhone game summit
- Postmortermが多かった
- iPhone関連のセッションは、「去年は満員。今回は空きがちらほら」と言った感じ
- あくまで「2009年の成功のストーリー」であり、「2010年の成功のストーリーは別」
(注釈)
iPhone関連のセッションに空きが出ていたという話を聞いて、「"iPhone = 儲からない"判断があったのか?」なんてことを考えたんだけど、「iPhoneの開発(販売)手法は、ほぼ確立した」という結論だった.
GeoSwarmのサクセスストーリー
- 成功するアプリの条件
- 目的がはっきりしている-- 戦略的、余計な事をしない
- リスクを取らない形を徹底している
- 『コスト=リスク』
- リスクを最小化- 時間とスタッフ数が重要なファクター
- (あと、軽くツールはもファクターに入る)
- 小さいチームで始める
- 目標を明確に
(注釈)
リスクを取らない形を徹底するというのは納得.
変な話だけれども、企業として「リスクを取らないことを徹底」という判断をするのは難しいとも感じた.
というのも、iPhoneアプリは総じて「企業活動としてやるためには、投資(リスク)とリターンが見合わない」というイメージを強く感じている企業が多いからだ.
企業活動としてモノを作り販売する場合、そこそこの規模でそこそこの収益が見込める商品が求められる傾向にある.
なので、「開発費は300万円しかかかりません、そして回収は400万円を見込んでいます.収益率は30%を超えるのでかなり良い数値だと考えます」ってのは、成績優秀ではあると思うんだけれども、ある一定以上の規模を持つ会社なんかだと通りにくくなってしまうんだろう.
それよりも、「開発費が1,000万円かかりますが、1,200万円の回収を見込んでいて、収益率は20%になります」って方が率は悪いが額がでかいので通りやすかったりする.
でも、単価が低くて、瞬発力の可能性はあるけれども、持続力に疑問符が付くiPhoneアプリで1,200万円の売り上げ計画を立てるってのは辛そうな気もする.
こんなところにも、企業が不利で個人開発者が有利な状況ってのも現れているのかもしれない.
GeoSwarm の取った戦略
- ジオメトリウォーズをパクります
- ゲームデザインもぱくる- 目標は小さく保つ
- パブリックリレーションはやらない
- PRに四割のリソースを割く- 趣味だけど、"ビジネス"の意識を持っている
- プロモーションには、PR エージェンシーを活用する
(注釈)
自分たちのチームには、「何ができて何ができないのか?」という点を出発地点にしているのは、当たり前だけれどもすごい.
「自分にはデザインができない」 -> 「けれどもジオメトリウォーズ程度ならできる」 -> 「見た目はジオメトリウォーズをぱくる」
「タワーディフェンス大好き」 -> 「タワーディフェンスの知識はいっぱいある」 -> 「タワーディフェンスを作る」
「プログラムは書けるけど、プロモーションはできない(し、やりたくない)」 -> 「PRエージェンシーを雇う」
といった、あくまでチームの強みを生かして、弱みの補強はチーム運営とは別手段を選択するという切り分けはすばらしい.
GeoSwarm が販売されてからの話
- 立ち上がりが遅い
- オススメに入る
- アップルのスタッフオススメ
- ホリデー対策はする- 顕著に出ている
(注釈)
発売開始時は、iTuneの新着情報にも乗るので売り時だと言われているようだけれども、『doodle jump』といい『GeoSwarm』といい成功アプリの例がスタートダッシュに成功していない点は興味深い.
「iPhoneアプリは商品寿命が短い」と捉えている人も多いようだが、在庫リスクが無く常にiTune上で販売されている点から、「商品寿命は長く、ユーザに認知されるまでのリードタイムはまちまち」として捉えた方が良いと思う.
まだ現状は、「AppStoreでいかに目立つか = トップセールスにいかに並ぶか」が成功の分かれ道になっていて、ヘッド(トップセールス上位)の売り上げだけがやたらとでかいような状態になっているような気がするんだけれども、もう少し販路が整備されてくると状況は良い方向に変わるのかもしれない.
市場的には情報サイトや専門雑誌をどのように保護していくのかってのと、どうやってあと少しのところでトップセールスに入りきらないアプリを紹介していくかって点が課題なんだろう.
そういった意味で、AppBankの挑戦は非常に評価できる.
GeoSwarm 話まとめ
- ビジネスのゴールを限定する
- 2万本うりたいのか?-- 20万本うりたいのか?
- 自分の分析
- 大きなリスクは必要がない
- (海外では)ニュースサイトに対するアプローチは、エージェンシーを通してしか相手にしてもらえない傾向にある
(注釈)
ちなみに GeoSwarm の作者は、PRエージェンシーに『Triple Point』という会社に頼んだらしい.
個人開発者でも取り扱ってくれるらしいので、チェックしておいて損はなさそう.
doode jump の話
- Doodlejump の初日のDL数は、25DLしか無かった- アップデートを繰り返しましょう
(注釈)
幅さん話でも上がったので軽く紹介.
メインカンファレンスの話
(注釈)技術系の話題は、いまは枯れている時期なのか?
正直なところ、ぱっとでのゲームプログラマがシステムを作りますって時代はそろそろ終わりが見えてきていて、開発チームの作家性をのばすために働くのか、がっつり足回りを固める部隊に所属するのかって選択が必要になっているんだろう.
漫画家のクリエイティビティーが分業化したように、ゲームデザイナのクリエイティビティーも分業化してそれが個としてのチームになっているんだろう.
ゲーム業界のトレンド
- 大型ゲームのビジネスモデルから脱却したい
- 小さく産んで大きく育てる方法の模索
- 欧米のゲームデザインが面白くなってきた
- ユーザーコミュニティを得たことで、科学的アプローチの車輪を回せる
(注釈)
iPhoneは、絶好の市場だと感じるのですよ
女性ゲーマー市場に関して
- 『Diner Dash』は90%が女性ユーザ
- 女性ゲーマーに対するアプローチが確定した
- ゲームデザインを科学的に分析して改善する方法論が確定した
- ソーシャルゲームは、女性が目立つようになってきた
- オンラインによって、ロジカルなアプローチが行えるようになってきた
- 仮説とアンケートをおこなった
- (例) 女性は、意味のある戦いがすき (結果) 女性82% 男性82%
(注釈)
女性ゲーマーに対するアプローチに関しては、全く実感がわかない.
ユーザ層を科学するというアプローチに関しては、日本はもっと見習う必要がある.
いや、ユーザ層を科学するというか、ゲーム開発を科学する力を全般的に高める必要があるんだおるな.
(大前さんの話の)まとめ
- 基本は『面白いゲームをつくる』こと
- オーディエンスをいかに作り、キープするか?- 既存のゲーム戦略と基本は変わらない
(注釈)
「iPhone市場の勝ち方は確定した?」といっても、宝くじを買ったら当たりましたよ感はどうしても拭いきれない.
『doodle jump』が400万DLされた実績があるからと言って、2,000万円開発費突っ込めるか?って話なんだと思う.
小規模デベロッパーが、空いた工数をつかって宝くじよりは自分が積極的に関与できる市場ってことも、そこに爆発力があるって事もわかるけれども、適正で良質な中規模アプリが堅実に儲かる方法/手法の確立が必要なんじゃ無かろうか?
(iPhoneアプリの『Spider』とか『Zen Bound』なんかは、ここに該当しそうな気がするんだけれども、事例とか出てないのかな?)