熱すぎる技術者の歴史-『新装版 計算機屋かく戦えり』

新装版 計算機屋かく戦えり

新装版 計算機屋かく戦えり

一言でいってしまうなら、日本コンピュータ史における『栄光無き天才たち』.
...栄光無きって言い切ってしまうのには抵抗があるが...

この本には熱すぎるドラマがある、でも「だから一番でなければいけないのだ」そんなことを感じた.

さて、ひとまず目次の紹介から始めよう.

序章 日本最初のコンピュータ
1章 初期の怪物たち
2章 知られざる周辺事情
3章 暗中模索のプロジェクト
4章 黎明期のコンセプトメーカー
5章 通産省とIBMの駆け引き
6章 電卓戦争の勝者
終章 ジャパニーズドリームの体現者
特別章 エレクトロニクスをポケットに入れた立役者

この本は元々、1996年に出版された同名の本の新装版にあたるらしい.
新装版の発行は2006年となる.

基本として、実際にコンピュータ開発(計算機開発)に携わった人へのインタビューで構成されているのだが、
よくもここまでインタビューを実行できたものだと感心してしまう.

あと10年たった後に同じ企画を立てたところでこの本以上のクォリティーにはならないだろう.

実際に現場で頭を悩ませ、手を動かした人にしか語れない時代が濃縮されている.
まさにすべてのタイミングが合致した本だ.

遠藤諭という人物の、企画力と実行力に感服してしまう.

正直、技術者として働いておきながら、コンピューター史といえばアメリカとステレオタイプ的に考えていた自分の無知が恥ずかしい.

本書を読みながら、何も感じるところのない技術者きどりの人間とは一緒に働きたくない.

「じいさんたちすげぇなぁ」と感じると同時に、それが現在進行形で続いていることにさらに驚く.

若いから最先端の現場にいるんじゃない、志があるから最先端の現場で踏ん張れるのだ.

じいさんたちには負けてられないよな.
もっと日本の技術者でいることに誇りを持とう.

そんなことを感じたのだ.

(補記)
この本には、再編集版の『日本人がコンピュータを作った』が新書サイズで発行されている.

日本人がコンピュータを作った! (アスキー新書 154)

日本人がコンピュータを作った! (アスキー新書 154)

目次を眺めてみた感じでは、『新装版 計算機屋かく戦えり』の中盤あたりに描かれている"計算機"の歴史部分が削られている感じだと思う.

エッセンスだけを手軽に抽出したければ新書版を読めば良いのかもしれないが...まぁ、これだけの良書をあえてライト版だけ読む意味は無いと思う.

(補記)
『栄光無き天才たち』よみてぇなぁ...

栄光なき天才たち 1 (集英社文庫(コミック版))

栄光なき天才たち 1 (集英社文庫(コミック版))